全てはいつか終わる。 全て生きるものはいつか死ぬ。 全て在るものはいつか消える。 それを永遠とする事は出来ない。 その行為を美しいとも思わない。 死と破壊が全てを平等に包む。 私たちが存在する世界はそうして成り立っている。 永遠を求めるのではなく…

お久しぶりです。 長編用に暖めていた設定が、ゲーム向きだと思ったので、企画書を書いています。 そのために、小説に向かっていた創作衝動が全てそっちに流れています。 ちょこちょこと小説も書いてはいるのですが、それはその企画用のお話で、ここに載せる…

『運動会』 「運動会、楽しみだね」 あの日、あの子はそう言って笑った。 焼けた肌に白い歯がまぶしかった。 私はただ、頷いてみせた。 風に乗って、歓声と拙いアナウンスが聞こえてくる。 私は無理を言って病室の窓際に座らせてもらい、その声に耳を傾けて…

17 「チバ?」 「うん。いま帰った。これ、家電?」 「そう」 「怒られない?」 「知らない」 「ケータイ、わからないんだ?」 「うん、どうしよ」 「アイリ、泣いてるの?」 「………」 「アイリ?」 「だってどうしたらいいか……」 「………」 「友だちとメール中…

『キス』 「えー! したことないの!?」 部室の外のベランダ。 隠れて昼寝をしていた俺の耳に、聞きなれた声が届いた。 「ふ、二人はあるの?」 ユイの問う声。 二人の小さな笑い声。 「だって、ねぇ」 「もう中二だよ」 なんだそれ? 俺、三年なんだけど………

『真剣勝負』 「じゃあ、勝負する?」 私はテーブルの上にあったヘアピンを掲げて見せる。 隣町のケーキ屋さんの小さな箱を挟んで、私とチトセはにらみ合う。 季節限定のモンブランと、定番の生チョコショートケーキ。 どっちが先に選ぶのか、いつもの真剣勝…

『宅配お姉さん』 大きな段ボールの蓋を必死に開けていると、玄関のチャイムが鳴った。 「こんちわ〜住田さ〜ん! 届け物ッス〜!」 届け物? 今日引っ越してきたとこなのに? なんだろう、親の言ってた電器屋かな? 訝りながらドアを開けると、赤いジャージ…

『小さなため息』 海からの冷たい風。 常夜灯の明かりが砂浜を照らす。 僕らは丸木の柵に腰かけて、他愛のない話をする。 バイト先の変な客、少し前に見た映画、初めてキスした時のこと。 妹みたいな存在だと思っていた。 一緒に食事したり、たまにカラオケ…

16 :チバ ケータイがね、ないの :アイリ? どした? このメールは? :友だちのケータイ 番号送るね。電話できる? :まだ仕事中 夕方ならだいじょうぶだけど :だめ 今話したいの 「チバ!」 「アイリ? どした?」 「ケータイがね、ないの」 「どっかで…

『拉致』 駅前の商店街。 夕方を過ぎて、人通りはまばら。 本屋に寄ったからちょっと遅めの時間。 いつもの帰り道を歩いていると、僕は拉致された。 黒い高級車が近付いたかと思うと、車内に引っ張り込まれる。 一瞬の出来事。 広い後部座席の上、学生服を次…

『快楽主義者』 ベッドの上。 シャワーの音が聞こえる。 僕はカバンから、小さな箱を取り出した。 中にはたくさんの写真。 一枚手に取ると、海を背景にナオミがビキニで笑っていた。 トップは付けてないけど、しゃがんでいるから全部は見えない。 次の写真は…

今日のお話はちょっと前に書いたものでした。 季節が違うのはそのためです。 いっちばん最初に書いた短編小説、 『おはよう』(萌理賞では『あの子がいた』) と同じキャラクターを使ってみました。 この「ナツハ」って女の子、私の中では「エド」*1と「よつ…

『夏』 ヒマワリが雨に揺れている。 庭は大きな水たまりになってる。 たくさんの雨の粒が、地面にぶつかっては跳ねる。 少し蒸し暑い部屋の中。 私たちは並んで座って、庭を見つめていた。 台風が三つもまとめてやってきて、もう一週間、外で遊べない。 ナツ…

『今日の献立』 オーブンを開くといい匂い。 俺はミトンの手で、四角い耐熱皿を取り出した。 「グラタン、グラタン〜!」 ハナはもうリビングのテーブルにつき、フォークを持って待ち構えている。 「今日はなに〜? 秋鮭? カボチャ? 普通にチキン?」 「意…

第五回萌理賞、終わりましたね。 今回は、『神無月の出張』から『神無月だけど神様います』へとつながりが出来たのがとても新鮮でした。 燃やし賞でも同様の事が起きていましたが(『狐舞い降りて、OKINAWA』→『10匹目の狐』)、ああいった試みは面白いです…

今日のお話はモチーフ『巫女』で書いた物です。 一度、萌理賞用に400字ちょいに削ったのですが、ここでは縛りがないので元のまま載せました。

『秋祭』 神輿の片付けを終えて広間に戻ると、マコトが抱きついてきた。 「コウくぅん! お疲れさま〜」 これ、どうしたの? 「お酒、飲み過ぎ」 ミコトが答える。 ああ、お神酒か。そういや、去年もこんなだったっけ。 いつもは静かな玄関脇の広間。 大人た…

15 「チバは他にもメル友いるの?」 「いるよ」 「何人くらい?」 「ふたりかな。アイリは?」 「アイリはわかんない」 「そんないるんだ?」 「でも、いちばんメールしてるのはチバだよ」 「僕もアイリが一番かな」 「チバ、何人くらい会った?」 「三人か…

『赤い玉』 マヒロはよく、楽しくないのに笑う時がある。 私はそれに気付いた時、どうすればいいのかわからなくなる。 放課後の美術室。 彼女はキャンバスに向かって、いつものように筆を使う。 殺風景な部屋の片隅。 今日も残酷な絵を描く。 広がったスカー…

第五回萌理賞投稿してきました。 私はやっぱり、イベント事が好きなようですね。 いや、もしかしたら感想が聞きたいだけなのかもしれませんが……。 今回、実は『巫女』をモチーフに書いていたお話があったのですが、あまりの巫女人気ぶりにそれを投稿するのは…

『本当の君』 今日は座ることが出来た。 僕はカバンから携帯ゲーム機を取り出すと、電源を入れる。 イヤホンを着けると、車内の騒音はオープニングのテーマ曲にかき消された。 主人公が森を抜けて新しい町に到着する頃、電車はいくつめかの駅で止まる。 ドア…

『男の子の遊び』 ヒカルにボールが渡った。 走りながら膝の小さなトラップでキープし、ドリブルに移る。 小学生とは思えない滑らかな動きだった。 俺も負けずにオーバーラップし、ヒカルからパスを受け取りやすい位置に走り込む ――と同時に、ヒカルからの低…

『アキくんの思い出作り』 奥歯がガチガチと鳴る。 僕は両手で身体を抱く。 さささ、寒いです、先輩。 「情けない! こんなので弱音を吐くわけ!? それじゃ、あたしの跡を継ぐなんてとても無理だわ!」 いや、継ぐ気ありませんし……。 「そんな言葉は聞きた…

『再会』 君と再会したのは、夏の終わり。 霧のような雨の降る朝だった。 君の腕には白い物が巻かれていた。 離れていた間、君に起こった出来事を、私はニュースで知っていた。 「久しぶり」 「うん、久しぶり」 「それ……」 私は君の包帯を見る。 「ああ、う…

『愛の言葉』 図書館の入り口から一番遠いベンチ。 その子はいつも、そこにいた。 折り目正しい白いブラウスに、背筋の伸びた姿勢。 蛍光灯の明かりの下、膝に大きな本を乗せ、ページをめくっていく。 「ああ、いつもいる子でしょ? ちょっと変わってるよね…

14 「おい、チバ〜!」 「なんやねん」 「チバがキレたよ。女の子にきれるなんてさいあく」 「キレてないし。なんでしょう、アイリさん?」 「チバって関西のひと?」 「なんで?」 「なんでやねんって言った」 「言ったっけ?」 「言ったよ。さっき言った。…

も、物凄く苦労しました……。 燃やし賞、投稿してきました。 ――けど、微妙にネタがかぶっちゃってるかも。 お話はすぐに出来たんですが、そこからの用語選択とか、考証とかに凄く時間がかかりました。 しかもSFは全くの専門外なので、間違ってる部分があるか…

『初恋の人』 僕はオルガン用の椅子に腰掛けて、リコーダーの練習をする。 先生は、気の向くままにピアノを弾いている。 放課後の音楽室。 夕暮れの光が、格子模様に壁を切り分ける。 僕は立ち上がると、そっとピアノに近付いた。 先生は目を閉じたまま、鍵…

〜燃やし賞開催〜 萌やし賞直後になんかきた! 面白そう! でも、私には書けそうにない! でも、45も枠がある! 多少時間かかっても間に合う!? ので、何か考えるかもしれません。 でも、読む方が面白そうって思う自分がいたり。

『記念日』 来客用駐車場に続く並木道。 肌寒い風が吹くたびに、赤く染まったもみじの葉が、紙吹雪のように舞い降りる。 その道の真ん中に、女の子がいた。 背中まである髪が、陽射しの中で艶やかに揺れていた。 切れ長の目は半分伏せられ、憂いを帯びた表情…