2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『今日の献立』 オーブンを開くといい匂い。 俺はミトンの手で、四角い耐熱皿を取り出した。 「グラタン、グラタン〜!」 ハナはもうリビングのテーブルにつき、フォークを持って待ち構えている。 「今日はなに〜? 秋鮭? カボチャ? 普通にチキン?」 「意…

第五回萌理賞、終わりましたね。 今回は、『神無月の出張』から『神無月だけど神様います』へとつながりが出来たのがとても新鮮でした。 燃やし賞でも同様の事が起きていましたが(『狐舞い降りて、OKINAWA』→『10匹目の狐』)、ああいった試みは面白いです…

今日のお話はモチーフ『巫女』で書いた物です。 一度、萌理賞用に400字ちょいに削ったのですが、ここでは縛りがないので元のまま載せました。

『秋祭』 神輿の片付けを終えて広間に戻ると、マコトが抱きついてきた。 「コウくぅん! お疲れさま〜」 これ、どうしたの? 「お酒、飲み過ぎ」 ミコトが答える。 ああ、お神酒か。そういや、去年もこんなだったっけ。 いつもは静かな玄関脇の広間。 大人た…

15 「チバは他にもメル友いるの?」 「いるよ」 「何人くらい?」 「ふたりかな。アイリは?」 「アイリはわかんない」 「そんないるんだ?」 「でも、いちばんメールしてるのはチバだよ」 「僕もアイリが一番かな」 「チバ、何人くらい会った?」 「三人か…

『赤い玉』 マヒロはよく、楽しくないのに笑う時がある。 私はそれに気付いた時、どうすればいいのかわからなくなる。 放課後の美術室。 彼女はキャンバスに向かって、いつものように筆を使う。 殺風景な部屋の片隅。 今日も残酷な絵を描く。 広がったスカー…

第五回萌理賞投稿してきました。 私はやっぱり、イベント事が好きなようですね。 いや、もしかしたら感想が聞きたいだけなのかもしれませんが……。 今回、実は『巫女』をモチーフに書いていたお話があったのですが、あまりの巫女人気ぶりにそれを投稿するのは…

『本当の君』 今日は座ることが出来た。 僕はカバンから携帯ゲーム機を取り出すと、電源を入れる。 イヤホンを着けると、車内の騒音はオープニングのテーマ曲にかき消された。 主人公が森を抜けて新しい町に到着する頃、電車はいくつめかの駅で止まる。 ドア…

『男の子の遊び』 ヒカルにボールが渡った。 走りながら膝の小さなトラップでキープし、ドリブルに移る。 小学生とは思えない滑らかな動きだった。 俺も負けずにオーバーラップし、ヒカルからパスを受け取りやすい位置に走り込む ――と同時に、ヒカルからの低…

『アキくんの思い出作り』 奥歯がガチガチと鳴る。 僕は両手で身体を抱く。 さささ、寒いです、先輩。 「情けない! こんなので弱音を吐くわけ!? それじゃ、あたしの跡を継ぐなんてとても無理だわ!」 いや、継ぐ気ありませんし……。 「そんな言葉は聞きた…

『再会』 君と再会したのは、夏の終わり。 霧のような雨の降る朝だった。 君の腕には白い物が巻かれていた。 離れていた間、君に起こった出来事を、私はニュースで知っていた。 「久しぶり」 「うん、久しぶり」 「それ……」 私は君の包帯を見る。 「ああ、う…

『愛の言葉』 図書館の入り口から一番遠いベンチ。 その子はいつも、そこにいた。 折り目正しい白いブラウスに、背筋の伸びた姿勢。 蛍光灯の明かりの下、膝に大きな本を乗せ、ページをめくっていく。 「ああ、いつもいる子でしょ? ちょっと変わってるよね…

14 「おい、チバ〜!」 「なんやねん」 「チバがキレたよ。女の子にきれるなんてさいあく」 「キレてないし。なんでしょう、アイリさん?」 「チバって関西のひと?」 「なんで?」 「なんでやねんって言った」 「言ったっけ?」 「言ったよ。さっき言った。…

も、物凄く苦労しました……。 燃やし賞、投稿してきました。 ――けど、微妙にネタがかぶっちゃってるかも。 お話はすぐに出来たんですが、そこからの用語選択とか、考証とかに凄く時間がかかりました。 しかもSFは全くの専門外なので、間違ってる部分があるか…

『初恋の人』 僕はオルガン用の椅子に腰掛けて、リコーダーの練習をする。 先生は、気の向くままにピアノを弾いている。 放課後の音楽室。 夕暮れの光が、格子模様に壁を切り分ける。 僕は立ち上がると、そっとピアノに近付いた。 先生は目を閉じたまま、鍵…

〜燃やし賞開催〜 萌やし賞直後になんかきた! 面白そう! でも、私には書けそうにない! でも、45も枠がある! 多少時間かかっても間に合う!? ので、何か考えるかもしれません。 でも、読む方が面白そうって思う自分がいたり。

『記念日』 来客用駐車場に続く並木道。 肌寒い風が吹くたびに、赤く染まったもみじの葉が、紙吹雪のように舞い降りる。 その道の真ん中に、女の子がいた。 背中まである髪が、陽射しの中で艶やかに揺れていた。 切れ長の目は半分伏せられ、憂いを帯びた表情…

まったくの私信でアレなのですが、仕事が詰まってきており、日々の更新が出来なくなるかもしれません。 単純に、書く時間が取れなくなりそうです。 まだ家に帰れているだけマシなのですが、いつどうなるかわからない状況です。 もし更新が止まったら、『ああ…

〜第二回萌やし賞〜終わりましたね。 他の方の作品が面白く、とても楽しみながら読ませていただきました。 『変人』いいなぁとか、『クール』の新しい表現とか、自分の中でも書いてみたい素材が出来ました。 あ、上記は私が応募した作品です。一応、補足。 …

『Pledge of the Knight』 薄暗い廊下の窓から見下ろすと、中庭の真ん中で使用人たちが輪になって歌っていた。 弦楽器の音に合わせて、輪の中心で男と女が踊る。 小さなランプの明かりが、地面に長い影を描く。 誰も私には気付かない。 ――あれは、違う世界で…

『あの子の夢』 水の流れる音で目が覚めた。 まだ暗い明け方。 ベッドを抜け出して裏口に出ると、いつか見た女の子がそこにいた。 朝霧の中、施設の洗い場で身体を洗っている。 褐色の肌がまぶしかった。 「水、気持ちいい」 僕に気付くと、その子は悲しげな…

『背丈』 裏山を抜ける近道。 車の付けた轍の上を、私達は歩く。 落ち葉が足元で、乾いた音を立てる。 タカヤは軽快な足取りで前を行く。 手にした枝で、野草を払う。 その仕草も、面立ちも、まだ子供にしか見えない。 制服なんて袖が余ってる。 家が隣同士…

今日のお話のお話。 最初は〜第二回萌やし賞〜に出そうかと思ったのですが、mizunotoriさんの"俺はそういうドジっ娘タイプの眼鏡は大嫌い"という言葉を見つけて中止しました。 ドジっ娘、いいと思うんですけど……。 あえて無視して出しちゃえば良かったかな?…

『ライバル』 ユミに告白した。 昼休み、音楽室からの帰り。 リカと廊下を歩いてるところに、突撃した。 ユミは顔を真っ赤に染めて、リコーダーやら教科書やらを足元に落とす。 予想通りのリアクションに、俺は思わず笑ってしまった。 「わ、笑うとこじゃな…

13 :ただいま〜 もう疲れたよ :おかえり〜。 今日は遅くない? もう八時だよ。 :うん こんど学祭あるからその準備してる :学祭あるんだ! 面白そうじゃん。 チバも行っていい? :いいんじゃない? 外のひとけっこう来るし あ、でもチバうるさいんだっけ…

噴いたって書かれてるぅ! そ、そっかー。 そりゃそうかー。 イベント事なので遊んでみたのですが、やっぱノイズになっちゃったかな? まあ、参加することに意義があるのです! きっと!

mizunotoriさんの文章を読んで、 ・知性、クール必須。 ・エッチ禁止。 ・メガネは狙いすぎててヤだから、禁止。 ・歴史が好きっぽい。 というふうに狙いを絞りました。 で、わざわざ萌えさせにくい『女の子自身が語る』系に決定。 キツいことを考えてるけど…

〜第二回萌やし賞〜 さすがです、mizunotoriさん。 とりあえず分析はしてみたのですが、さてどうしよう……。 素直に書くのもアレかなぁと思ってたり。 ひねくれて書いてもいいと名言されているので、そっちを狙うべきなのかな? 複数回答不可って書いてないか…

『嫌い』 夕日に向かって全力でブランコをこいだら、赤とんぼが鼻に当たった。 ―――!! あたしは思わずバランスを崩す。 一番高い所で、落ちそうになった。 必死でブランコに掴まる。 後ろ、前、後ろ――と揺れて、やっと地面に足がついた。 こ、こわかったぁ…

『アキくんのお昼休み』 「で、では失礼します」 女の子は顔を赤らめると、小さくお辞儀をして駆けていった。 なんかこう、おとなしそうでいいなぁ。 すれてないっていうか、可憐さがあるよな。 なのに……なんで……。 中学校舎と教職員棟をつなぐ、屋上の連絡…