2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『逆転』 街を見下ろす丘の上。 大きな木の根元。 日差しは強いけど、木陰に吹く風は涼しい。 私は読み終えた本を脇に置いた。 「お茶ぁ……」 頭上からの声。 見上げると、チカが太い枝にまたがって手を差し出していた。 私は水筒の蓋を取ると、コップの上で…

『夏祭り』 裸電球。 暑い空気。 人ごみに、騒がしい声。 屋台からの匂い。 たこ焼き、焼きそば、リンゴ飴。 「ここのいか焼き、おいしいんやで!」 君は満面の笑みで、紙で包んだ薄いお好み焼きを頬張る。 「お好み焼きちゃう! いか焼き!」 はい、いか焼…

『アイリ』 の転載を忘れてました。 ちょっと遅くなりましたが、 掲載。 メールから始まる交流。 少しずつ 近付いていく過程を描くつもり。 二人の関係は、 まだこれからです。

6. :おはよう〜 いま学校だよ すんごい眠い :おはよう、ナマコちゃん。 :ナマコじゃないよ? アイリだよ? ちゃんと覚えた? :たぶん覚えた。 てか、学校でメールしていいの? ケータイ取り上げられるよ? :だいじょぶだよ 先生おじいちゃんだから、な…

『海と空の間』 マングローブの林を抜けると、輝くような青。 視界いっぱいの、海と空。 砂浜にナミの足跡。 水着の背中。 波打ち際に走っていく。 私と弟は、その後を追う。 澄んだ水が肌に冷たい。 ナミは浅瀬にしゃがんで、手で水をすくいながら言う。 「…

『向日葵』 夏の朝。 向日葵の花束を持って、僕は電車に乗る。 窓際の席に座り、窓を開けて外を眺める。 濃い緑の山並み。 日差しを照り返す、高速道路のアスファルト。 時折見える、青い水平線。 強い風が、僕の前髪を跳ね上げる。 重い向日葵の花を揺らす…

や、やった! 第三回萌理賞入賞しました! 念願でしたので、嬉しいです。 sirouto2さん、ありがとうございました。 萌えとしては弱いかもと思いつつ、 感情の発露をテーマに書いたのが いい評価につながったようです。 そろそろ普通の長編を 書いてみるべき…

恒例になってきました。 第二回萌理賞に投稿した、 『弱点』 と、 『付き合うとか付き合わないとか』 をアップしました。 両方とも、 少しえっちい話になっています。 なんでかなぁ? 続けて書いていると、 傾向が似る、というのはあるみたい。 その時に気に…

『付き合うとか付き合わないとか』 窓から、常夜灯の光が差し込む。 狭い布団部屋。 動かない空気に肌が汗ばむ。 リサとユッコは、テレビの話をしている。 僕はコウと学校の話で笑い合う。 「好きな子できたか?」 「いないよ」 僕は即答する。 「えー、そう…

『弱点』 ロフトへと続く、急な階段を登る。 チトセが背中を向けて、あぐらをかいていた。 一心不乱にジグゾーパズルを組み立てている。 私が登ってきた事にも気が付かない。 天窓からの日差しが、チトセの上に落ちている。 冷房の届かないこのロフトは、そ…

第三回萌理賞始まりました! 先ほど投稿してきました。 今回はちょっと趣向を変えてみました。 どうかなぁ? 心配でもあり、 楽しみでもあります。 時間があったので推敲に時間が取れましたが、 その成果が出ているかどうかは謎です……。 いい結果がもらえる…

『デート』 日が落ちて、人のまばらな遊園地。 ライトアップされたビルが、間近に見える。 見下ろすと、夜の海に同じ風景が映り込んでいた。 君は黙ったまま、同じように窓の外を見つめている。 何だか物憂げな表情。 「綺麗だね」 女の私に沈黙を破らせるな…

この秘法は、 友達に教わりました。 由来は知りません。 あ、あと、 ほんとに効きません。 でも、 気分は変わるかも。 あ、あと、 人の多いところでやると、 周りに空間が出来ます。 ご注意を。

『秘法』 ひっく! ミサキの派手な声が店内に響く。 客が振り向く。 ミサキは澄ました顔で立っている。 ひっく! また客が振り向く。カップルの男が小さく笑った。 ミサキは先週入荷したノースリーブに、太腿の出るハーフパンツ。 長い脚を強調した、いつも…

『藤の葉』 僕は竹ボウキを両手で構えると、ジンに殴りかかった。 ジンは金バサミとちり取りをクロスさせて受ける。 集めていた葉が宙に舞った。 「なにしてんの!?」 キサが小さなホウキを持って駆けてくる。 もう一度、僕が振りかぶった時、ジンはちり取…

読み返して思いましたが、 この話のラストが 『猫の幸せ』とは言えませんね。 私の自己満足に過ぎない。 でもこれがきっと、 私自身なのでしょう。 もし不快に思われる方がいたら、 申し訳ありません。

私は猫が大好きです。 子供の頃、 いつも家には猫がいました。 でも、 今は状況が違うので、 身近に猫はいません。 状況が許さないから、 選択しないのです。 私には、 誰かを責めたり、 同情したり、 批判する勇気はありません。 だから、 話を書きます。 …

『願い』 真っ暗な小部屋。 ざらざらとした木の感触。 隙間からぬるい水が入ってくる。 だんだん部屋に満ちていく。 兄たちが、必死で鳴いている。 弟はまだうまく鳴けない。 四角い部屋は、屋根が打ち付けられていて、私たちには出る術がない。 殺すつもり…

『伝言』 階段を一段飛ばしに駆け下りたら、背後からTシャツの裾をつかまれた。 「はええ! もう追いついたのかよ!」 振り向いたらシャツの裾を握ってたのは、鬼のタイジじゃなく、同じマンションに住んでるリカだった。 親が知り合いだけど、下級生だし女…

5. 「こんばんはー!」 「チバ、だよね? ヘンなの」 「………」 「チバ?」 「え! あ――、ヘン? なんで? 普通じゃん」 「んとね、もっと声高いと思ってた」 「僕は、もっと声低いと思ってた」 「あたし、声高いんだ?」 「うん。そうじゃない? カラオケとか…

のんびりしたなぁ。 ゲームばっかしてた。 会社の夏休みは、 今日で終わり。 実家に帰らなかったので、 のんびりダラダラ過ごしました。 お出かけもしましたが、 半分くらいはゲームしてました。 ええ、 すっごいダメ人間です。 でもきっと、 何かが満ちたん…

『藍』 「なんかよお、めがきれいながよね」 は? 目? 全く意味が分からない。 応える必要はないと判断し、俺はその子の目を見てみる。 目なんて誰でも同じものだ。 せいぜい違っても、色や瞼の形程度だろう。 ましてや綺麗かどうかなど、個人の思い込みで…

『きらきら』 噴き出すスプリンクラー。 濡れた芝生。 女の子は裸足でくるくると踊る。 柔らかい髪が広がる。 白いスカートが膨らむ。 「あなたも一緒に遊ぶ?」 ここに来ると思い出す。 長く続いた戦争の終わり。 憂鬱な朝。 庭を散歩していると、薄暗い小…

『虫捕り』 畑の脇を通る道。 浅い川を渡る、コンクリートの小さな橋。 親に連れられてきた田舎の町。 でも、私にはお盆なんてつまらないだけだった。 美術の宿題をするために、私は画材道具を抱えて歩き回る。 古い階段を登った先の神社。 セミの声が境内に…

コミケ話の続きです。 秋葉原編。 午後3時頃にビッグサイトを出て、 メイド喫茶に向かいました。 え? 間違ってますか? だって、行った事なかったんです! 地元に帰省した時、 友達にメイド喫茶の事ばかり聞かれて、 「行った事ない」 という度にがっかり…

『自動ドア』 チサが自転車でやってくる。 ガラス越しに指をさされた。 俺は雑誌に目を戻す。 チサは自転車を止め、店の扉の前まで歩く。 開かない。 悪態をつく。背伸びする。跳び上がる。左右にウロウロする。 しゃがみ込んで息をととのえる。 前後にウロ…

コミケ話です。 とりあえず、コミケ会場でのお話を。 行くまでは、 『大きめの花火大会』 くらいだと思ってたんですが、 現実は、 『』 くらいの人手でした。 ――あ、あれ? 表現出来ない!? 私の中に比較出来るものがないんだ……。 生まれて初めて あんな大…

『カトラリーレスト』 レトロなデザインの木の扉。 開くと可愛い音がする。 いらっしゃいませの声。 暖かみのある木のテーブル。 私は椅子に座ると、白いクロスの上のキツネをちょん、とつついた。 「お気に入りですね」 はっとして顔を上げると、ウェイター…

だ、だめだだめだ! 日曜の夜ですね。 萌え理論Magazine アップしました。 で、こちらには先週の分を 追加です。 では、あらためて おやすみなさい。

4. :チバ、今なにしてる? :ん〜? 部屋にいるよ。 スマスマ見てる。 :あ、スマスマ忘れてた! もう見れないな やっぱり来ないとよかった :つよし、おもしろいよ。 アイリ、外にいるの? :くさなぎ君はびみょうだよ? 今ね、くるま :車なんだ。 親とお…