『向日葵』


 夏の朝。
 向日葵の花束を持って、僕は電車に乗る。
 窓際の席に座り、窓を開けて外を眺める。
 濃い緑の山並み。
 日差しを照り返す、高速道路のアスファルト
 時折見える、青い水平線。
 強い風が、僕の前髪を跳ね上げる。
 重い向日葵の花を揺らす。
 少し遠くに行った友達。
 僕は君に会いに行く。
 君がくれた向日葵の種。
 やっと綺麗に咲いたんだ。
 だから、すぐにでも君に見てもらいたくて、僕は電車に乗ったんだ。
 電車は心地よい速度で、君と僕との距離を縮めていく。
 最初になんて言おうかな?
「ひさしぶり」
 かな?
 それとも、
「最近暑いね」
 かな?
 僕は君に、初めて花を贈る。
 君が僕にくれた花を。
 うちの庭にたくさん咲いた向日葵を。
 君の、大好きだったこの花を――。


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