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「……チバ、げんき?」
「アイリ!」
「ん?」
「大丈夫なの!?」
「アイリは大丈夫だよ。
 チバはおかしくなっちゃった?」
「僕は……元気だよ」
「そっかー。今日もひきこもってた?」
「アイリ、今どこにいるの?
 これ、外?」
「うん」
「ちゃんとあったかくしてる?」
「うん……」
「アイリ?」
「チバ……」
「どうしたの?」
「……ごめんね。
 あたし、人を殺しちゃったかもしれない」
「―――!!」
「ごめんね……」
「どうして……?」
「だって……最悪だったんだよ?」
「………」
「逃げたかったの……」
「……うん」
「部屋にあった薬、ぜんぶお酒の中に入れたんだ。
 そのガイジン、もうイっちゃってたからふつうに飲んだよ。
 そしたらベッドに倒れこんで動かなくなっちゃって。
 すごい汗かいてた。
 なにか吐いて震えだして。
 怖くなって部屋から出たの」
「そっか……」
「ごめんね、チバ……」
「………」
「ごめんね……」
「………」
「………」
「なぁ、アイリ、遊園地行こう!
 ジェットコースター乗ったり、ソフトクリーム食べたりしよう!」
「……チバ?」
「観覧車も乗るよ!」
「観覧車?」
「そう! ポップコーンとか食べながら一緒に遊ぶんだよ!」
「……楽しい?」
「当たり前じゃん!
 一緒にお化け屋敷で走り回ったり、メリーゴーランド箱乗りしたりすんだよ。
 超テンション高いよ?」
「チバ、アホだもんね」
「チバはかしこい大人です」
「それは間違ってるよね」
「ジェットコースターとか、観覧車とか、アイリと乗りたいよ。
 行こうよ、遊園地!」
「遊園地……」
「そう、遊園地〜!」
「……チバとなら、楽しめそうな気がする」
「そうでしょ? 行こう!」
「うん、わかった。
 行くよ。
 いつか、きっとね」