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『デート』
日が落ちて、人のまばらな遊園地。
ライトアップされたビルが、間近に見える。
見下ろすと、夜の海に同じ風景が映り込んでいた。
君は黙ったまま、同じように窓の外を見つめている。
何だか物憂げな表情。
「綺麗だね」
女の私に沈黙を破らせるなんて、まだまだね!
「うん……」
………。
そ、それだけ!?
会話終わっちゃったじゃん!
初めてのデート。
ウィンドウショッピングして、遊園地。
ジェットコースター、アイスにお化け屋敷、観覧車。
もう、すっごいベタ。
ていうか、せっかく二人きりなんだから、何か喋ってよ。
狭いゴンドラは、冷房が強くて寒いくらい。
私はスカートから出た膝を、両手で包んだ。
不意に君と目が合う。
いち、にい、さん、しい……。
見つめ合ったまま、時間が過ぎる。
な、何か言いなさいよ!
ドキドキしてくるでしょ!
君が意を決したように、窓枠に手をかけ、身を乗り出す。
い、いきなり!?
どうしたらいいの!?
君が目を閉じる。
閉じちゃうの!?
私も初めてなんだよ?
夜景を背に目を閉じた君を、私はやっぱり可愛いと思う。
な、なんなのよ!?
卑怯な男!
私はリップを気にしながら、震える手を君の肩に回した。
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