『快楽主義者』


 ベッドの上。
 シャワーの音が聞こえる。
 僕はカバンから、小さな箱を取り出した。
 中にはたくさんの写真。
 一枚手に取ると、海を背景にナオミがビキニで笑っていた。
 トップは付けてないけど、しゃがんでいるから全部は見えない。
 次の写真は夜の公園。
 ナオミは、ジャングルジムから僕を見下ろしている。
 スカートの中、下着は着けていなかった。
 次はブランコを立ち漕ぎする姿。
 さっきと同じ服装。
 風に長い髪が揺れている。
「もっと撮りたい」
「うん、もっと撮って」
 昼間の、誰もいない電車の席。
 ナオミは膝を立てている。
 明るい大講義室の机の上。
 ナオミは両足を抱えて座っている。
 下着とジーンズは太腿まで下ろしていた。
「気持ちよくなれるんなら、死んじゃってもいい」
 僕らはその夏、一生分の愛の言葉をささやいた。
 また一枚を手に取る。
 夕日の差す学部棟の屋上。
 ナオミは、ワンピースの前ボタンを全部開いていた。
 手摺りに手をかけ、目線は夕暮れの街並み。
 はるか遠く。
 同じ場所で近付いて、前屈みに僕を見上げている写真。
 何だかえっちな気分になってきた。
「なに一人でしてんのよ」
 シャワーを終えたナオミが、ベッドに飛び乗ってくる。
 自分の写真の上に身体を横たえる。
 指先を唇に当てて、挑発するような笑み。
 僕はまた、カメラに手を伸ばした。


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