2006-01-01から1年間の記事一覧

『再会』 君と再会したのは、夏の終わり。 霧のような雨の降る朝だった。 君の腕には白い物が巻かれていた。 離れていた間、君に起こった出来事を、私はニュースで知っていた。 「久しぶり」 「うん、久しぶり」 「それ……」 私は君の包帯を見る。 「ああ、う…

『愛の言葉』 図書館の入り口から一番遠いベンチ。 その子はいつも、そこにいた。 折り目正しい白いブラウスに、背筋の伸びた姿勢。 蛍光灯の明かりの下、膝に大きな本を乗せ、ページをめくっていく。 「ああ、いつもいる子でしょ? ちょっと変わってるよね…

14 「おい、チバ〜!」 「なんやねん」 「チバがキレたよ。女の子にきれるなんてさいあく」 「キレてないし。なんでしょう、アイリさん?」 「チバって関西のひと?」 「なんで?」 「なんでやねんって言った」 「言ったっけ?」 「言ったよ。さっき言った。…

も、物凄く苦労しました……。 燃やし賞、投稿してきました。 ――けど、微妙にネタがかぶっちゃってるかも。 お話はすぐに出来たんですが、そこからの用語選択とか、考証とかに凄く時間がかかりました。 しかもSFは全くの専門外なので、間違ってる部分があるか…

『初恋の人』 僕はオルガン用の椅子に腰掛けて、リコーダーの練習をする。 先生は、気の向くままにピアノを弾いている。 放課後の音楽室。 夕暮れの光が、格子模様に壁を切り分ける。 僕は立ち上がると、そっとピアノに近付いた。 先生は目を閉じたまま、鍵…

〜燃やし賞開催〜 萌やし賞直後になんかきた! 面白そう! でも、私には書けそうにない! でも、45も枠がある! 多少時間かかっても間に合う!? ので、何か考えるかもしれません。 でも、読む方が面白そうって思う自分がいたり。

『記念日』 来客用駐車場に続く並木道。 肌寒い風が吹くたびに、赤く染まったもみじの葉が、紙吹雪のように舞い降りる。 その道の真ん中に、女の子がいた。 背中まである髪が、陽射しの中で艶やかに揺れていた。 切れ長の目は半分伏せられ、憂いを帯びた表情…

まったくの私信でアレなのですが、仕事が詰まってきており、日々の更新が出来なくなるかもしれません。 単純に、書く時間が取れなくなりそうです。 まだ家に帰れているだけマシなのですが、いつどうなるかわからない状況です。 もし更新が止まったら、『ああ…

〜第二回萌やし賞〜終わりましたね。 他の方の作品が面白く、とても楽しみながら読ませていただきました。 『変人』いいなぁとか、『クール』の新しい表現とか、自分の中でも書いてみたい素材が出来ました。 あ、上記は私が応募した作品です。一応、補足。 …

『Pledge of the Knight』 薄暗い廊下の窓から見下ろすと、中庭の真ん中で使用人たちが輪になって歌っていた。 弦楽器の音に合わせて、輪の中心で男と女が踊る。 小さなランプの明かりが、地面に長い影を描く。 誰も私には気付かない。 ――あれは、違う世界で…

『あの子の夢』 水の流れる音で目が覚めた。 まだ暗い明け方。 ベッドを抜け出して裏口に出ると、いつか見た女の子がそこにいた。 朝霧の中、施設の洗い場で身体を洗っている。 褐色の肌がまぶしかった。 「水、気持ちいい」 僕に気付くと、その子は悲しげな…

『背丈』 裏山を抜ける近道。 車の付けた轍の上を、私達は歩く。 落ち葉が足元で、乾いた音を立てる。 タカヤは軽快な足取りで前を行く。 手にした枝で、野草を払う。 その仕草も、面立ちも、まだ子供にしか見えない。 制服なんて袖が余ってる。 家が隣同士…

今日のお話のお話。 最初は〜第二回萌やし賞〜に出そうかと思ったのですが、mizunotoriさんの"俺はそういうドジっ娘タイプの眼鏡は大嫌い"という言葉を見つけて中止しました。 ドジっ娘、いいと思うんですけど……。 あえて無視して出しちゃえば良かったかな?…

『ライバル』 ユミに告白した。 昼休み、音楽室からの帰り。 リカと廊下を歩いてるところに、突撃した。 ユミは顔を真っ赤に染めて、リコーダーやら教科書やらを足元に落とす。 予想通りのリアクションに、俺は思わず笑ってしまった。 「わ、笑うとこじゃな…

13 :ただいま〜 もう疲れたよ :おかえり〜。 今日は遅くない? もう八時だよ。 :うん こんど学祭あるからその準備してる :学祭あるんだ! 面白そうじゃん。 チバも行っていい? :いいんじゃない? 外のひとけっこう来るし あ、でもチバうるさいんだっけ…

噴いたって書かれてるぅ! そ、そっかー。 そりゃそうかー。 イベント事なので遊んでみたのですが、やっぱノイズになっちゃったかな? まあ、参加することに意義があるのです! きっと!

mizunotoriさんの文章を読んで、 ・知性、クール必須。 ・エッチ禁止。 ・メガネは狙いすぎててヤだから、禁止。 ・歴史が好きっぽい。 というふうに狙いを絞りました。 で、わざわざ萌えさせにくい『女の子自身が語る』系に決定。 キツいことを考えてるけど…

〜第二回萌やし賞〜 さすがです、mizunotoriさん。 とりあえず分析はしてみたのですが、さてどうしよう……。 素直に書くのもアレかなぁと思ってたり。 ひねくれて書いてもいいと名言されているので、そっちを狙うべきなのかな? 複数回答不可って書いてないか…

『嫌い』 夕日に向かって全力でブランコをこいだら、赤とんぼが鼻に当たった。 ―――!! あたしは思わずバランスを崩す。 一番高い所で、落ちそうになった。 必死でブランコに掴まる。 後ろ、前、後ろ――と揺れて、やっと地面に足がついた。 こ、こわかったぁ…

『アキくんのお昼休み』 「で、では失礼します」 女の子は顔を赤らめると、小さくお辞儀をして駆けていった。 なんかこう、おとなしそうでいいなぁ。 すれてないっていうか、可憐さがあるよな。 なのに……なんで……。 中学校舎と教職員棟をつなぐ、屋上の連絡…

『プレゼント』 甘い香り。 黄色に、青に、オレンジのケーキみたいなかたまり。 巨大なクグロフ型。 凝ったプレゼントみたいなラッピング。 外国の生鮮食品売り場のようなディスプレイ。 駅ビルの中の石鹸屋さん。 僕は君に付き合って、店の中に入る。 小さ…

『今週のアキくん』 体育館に続く渡り廊下を歩いていると、先輩に肩を叩かれた。 「今週の標語、考えてきたわよ」 そう言って、胸を反らすと前髪を払う。 標語――。 きっとまた、おかしな事を言い出すんだ、この先輩は。 「いいですけど……、僕には関係ないで…

『雨の日』 雨の日のにおいは嫌い。 甘くてベタベタしてるから。 雨の日の音も嫌い。 ブツブツといつまでもしつこいから。 一人バス停に立っていると、誰かが隣に立った。 濡れたズボンに、合服のベスト。 傘を傾けると、リョウが雨に濡れながら、不機嫌そう…

12 :この前のひと、どうだった? 楽しくお食事できた? :無理。ありえない。 :そんなひどかったの? 聞かせてよ 電話していい? 「こんば〜」 「……こんば」 「なに? ヘコんでるの?」 「………」 「チバ、おもしろいよ! おもしろ〜い! ねね、なにがあった…

『大人の階段』 怖いんなら、やめとけばいいのに。 「いいのー! するのー!」 俺のベッドに座り、ハナは駄々をこねる。 短いお下げがパタパタと揺れる。 先生に怒られるぞ? 「い、いいもん!」 母さんも怒るんじゃないか? 「もうー! 自分はしてるくせに…

『かけっこ』 よ〜い―― どん! 先輩が弾かれたように飛び出す。 全力で走る。 揺れるお下げ。 膨らむ制服のブラウス。 教科書通りの綺麗なフォーム。 僕もそれを斜め前に見ながら、本気で走る。 「勝ったら譲ってあげるよ」 今度の土日に開催される、ちょっ…

『引越し』 ぎざぎざの葉っぱが、膝の上に落ちる。 見上げると、木の葉の隙間から細い光。 大きな石のベンチに、僕たちは並んで座っている。 ちづ姉ちゃんは両足を前に伸ばして、行儀の悪い姿勢。 「――引越し、決まったんだ」 僕は驚いてその顔を見つめた。 …

◆第一回 萌えってそういうことだったのか会議 はてなユーザー篇 終了しましたね。 私自身ははてなに詳しくないので、実はいじられてる人が誰かわかりませんでした……。 xx-internetさんをネタにする人が出てこなかったのは、少し残念だったかも。

さて、この二人は何というゲームをやっているのでしょう? みたいな。

『僕らの冒険』 授業が終わった後の、塾の階段教室。 いくつかのグループになって、みんな雑談してる。 昨日のドラマの展開とか、マンガの主人公の行方だとか。 もらったプリントをカバンに詰め込むと、僕は立ち上がる。 ナエの席に近付くと、ゲーム機の画面…