『帰り道』


 アスファルトの上の小石を蹴る。
 転がって、用水路にぽちゃんと落ちる。
 学校からの帰り道。
 みんなから少し離れて、僕はゆっくりと歩く。
 小石の残した小さな波紋。
 すぐに広がって見えなくなる。
「―――!!」
 いきなり後頭部に衝撃を喰らった。
「なんで先に帰るのよ!」
 振り向くと、カナが自転車に乗っていた。
「なんでいきなり殴るんだ!?」
「先に帰っちゃうからでしょ?」
 友達が見てる。
 恥ずかしい。
「そんなの――僕の勝手だろ?」
 思わず目をそらした。
「そういうこと言うわけ?
 つめたーい!」
「そうだぜ、トオル
 つめたーい!」
 みんなの笑い声。
 カナは自転車を降りると、腕を組んできた。
「く、くっつくなよ」
「もう! 素直じゃないなぁ」
「意味がわかんないから」
 カナが僕の顔を、下からのぞき込む。
「あたしの事、好きなくせに!」
「な――!?」
 カナが笑いながら、自転車をついて走る。
 僕を、みんなを、追い越していく。
 長い髪がぽんぽん跳ねる。
 水面を背に、きらきらと光る。


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