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『ネコ』
家の居間。
私は、ソファに横になっている。
妹が自分の部屋から降りてきて、冷蔵庫を開ける。
「チィ!」
「あ、はい!」
妹が返事をする。
「よしよし〜」
私は腕の中のネコを撫でる。
妹が泣きそうな顔になる。
「あはははは!」
妹は黙って、自分の部屋に戻っていった。
テレビの音がやけに大きく聞こえた。
自分の部屋。
私は扉を少し開いて、ネコに話しかける。
「チィ、大きな目だね」
「あくびなんかして、眠い?」
「撫で撫でしてあげる」
「チィは可愛いなぁ」
隣の部屋の、扉が開く音。
足音は私の部屋の前で立ち止まる。
「お姉ちゃん、嫌い……」
その声は、私の胸をチクッと刺した。
廊下を遠ざかっていく。
だって、でも素直に言ったら、きっともっと、傷付けちゃうよ……。
私はベッドの上で、ネコをギュッと抱きしめた。
柔らかくて、暖かい。
妹を抱いたら、どんな感じがするのかな?
ネコは一声鳴くと、身体をよじって、私の腕からすり抜けた。
私は少し、後悔する。
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