『秘密基地』


 私はその日、秘密基地に招待された。
 少し前から二人が何か企んでいる事には気付いていた。
 二人の秘密主義はいつもの事。
 可愛い私の下僕たち。
 どうせ私の掌の上からは逃げられない。
 手を引かれ、部屋の中へと入っていく。
「ようこそ、姫」
「ようこそ、我らが城へ」
 狭い空間に二人の声が響く。
 毛足の長い絨毯の上を歩き、身体が沈み込むようなソファに腰掛けた。
 何を利用してこんな物を作り上げたのだろう。
「手厚い歓待、感謝します」
 私は片手を差し出した。
 二人が跪く気配。
 順に私の手に口付ける。
「では、ごゆっくりお眠り下さい」
 小さく笑って、二人は離れていく。
 遠くで重い物を引きずる音。
 その後、静寂に包まれた。
 この遊びはいつまで続くのだろう。
 私はゆっくり身体を起こすと、目隠しを外した。
 闇。
 動くものの気配すらない。
 立ち上がり、手を伸ばすと、指先が壁に触れた。
 冷たく、さらさらとした石の壁だ。
 私は手探りで出口を探す。
 だが、どこも、ただの石の壁があるだけだった。
 押しても叩いても、びくともしない。
 喚いても罵っても反応がない。
 全身を戦慄が走った。
 私は、私の叫び声を聞いた。
 私は息子たちの笑いの意味を悟った。


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