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冬:


「最初?」
「うん」
「覚えてる?」
「どんなだっけ?」
「……忘れてるんだ」
「いや、覚えてるよ。
 ほら、あの……なんだっけ?」
「忘れてるよ、この人さいあくー! じゃあね!」
「うそうそ。
 アイリの書き込み見つけてメールしたよね。
 スヌーピーの話とか書いた気がする」
「そだっけ?」
「アイリも覚えてないじゃん!」
「てかさ、なんでチバはあたしにメールしたの?」
「なんでって?」
「他にも書き込みあったでしょ?」
「それはまあ、なんていうか……」
「あんまなかった?」
「いやいや」
「女の子全部に出したの?」
「いやそれはどうでしょう?」
「誰でもよかったの?」
「まあ、ぶっちゃけ」
「………」
「………」
「こらチバ!」
「……はい、なんでしょう?」
「そこはアイリがよかったんだ〜!って言うとこだよ?」
「アイリさんがよかったんです〜!」
「チバのうそつきー!!」
「どうせぇっつ〜のよ」
「チバは前からこういう事してたの?」
「ん? メール?」
「そう」
「まあ、してたかな」
「してたんだ……。
 会ったりもしてたの?」
「会ってはないかな」
「うそつきー!」
「なんでやねん!」
「メールしてて会ってないわけないよ!」
「いや会ってないし」
「うそ」
「ほんと」
「うそー!」
「アイリさんと話が通じません。
 どうしたらいいでしょう?」
「誰に相談してるの?」
「みのさん」
「みのさんいないから」
「えー、いてよ」
「いません。チバはちゃんと答えてください。
 会ってたよね?」
「会ってません!」
「えー、なんで!? おかしいよ、ぜったい!」
「おかしいゆうなー。
 シャイなんです」
「シャイ?」
「そう、シャイ」
「シャイってなに?」
「シャイはシャイしぇしょ!」
「噛んでるよ、チバ。
 しゃいしぇよ! だって」
「……もう切ります」
「待って待って!
 ほんとに会ったことないんだ?」
「そうだよ! わるい!?」
「チバがキレたよ。女の子にキレるなんてさいあくー」
「ん? なんかそのセリフ、前も聞いた気がする」
「そなの?」
「うん」
「誰から?」
「アイリから」
「ほんとに? 知らない」
「たしか聞いたような……」
「チバは引きこもりだから会わないの?」
「なに、いきなり」
「そうなの?」
「引きこもりとか、そんな人を傷つけるようなことを言ってはいけません」
「どうなの?」
「まあ、そう」
「引きこもりか〜。ダメ人間ですね」
「ほっとけ」
「いいじゃん、引きこもり!
 あたしは好きかも。
 てか、チバは好きだよ」
「アイリ、ヘンな子だよ」