■
『校庭の隅』
両手をぎゅっと握る。
アサちゃんが僕の目の前にしゃがんでいる。
「恥ずかしいよ……」
校庭の隅。
理科室の裏の木陰。
「だって、知りたいんでしょ?」
アサちゃんが僕を見上げる。
「あたしだって、恥ずかしいんだから」
いきなり僕のズボンを下ろそうとする。
「で、でもここ外だし!」
「じゃあトイレ行く?」
「え……」
女子トイレに入るのだけはイヤだった。
「じゃあ、して」
「う〜……」
お尻が寒い。
身体がキュッてなる。
「そんなすぐ出ないよ」
僕は泣きそうになりながら、アサちゃんを見る。
「もう! じゃあわかった!」
アサちゃんがいつもの短気を起こす。
「あたしが先にするから!
それでいいでしょ?」
言い返せない自分がいた。
アサちゃんがスカートの中に手を入れる。
遠くでサッカーをする声が聞こえる。
汗が乾いてちょっと肌寒い。
アサちゃんがその場にしゃがみ込む。
廊下を誰かが駆けていく。
水の流れる音が聞こえる。
僕は五時間目の九九のテストが気になる。
(400文字)