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:アイリ、学祭行けなくてごめん。
:どうでもいいよ
:学祭、楽しかった?
:ふつうだよ
:コウジ君と仲良くなれた?
:忙しかったんだってば
 気分悪かったし
:気分悪かった?
 体調悪かったの?
:そうじゃないけど
:ごめんね。
 話出来る?


「アイリ、楽しみにしてたんだ」
「学祭?」
「ちがうよ」
「僕?」
「遊べるって思ってた。会えるって」
「………」
「ほんとはずっと前から気になってた。
 会ってみたいって思った」
「そか……」
「でも、もういいや」
「嫌いになった?」
「わかんない」
「………」
「………」
「チバ、病気なんだよきっと。ずっと前から」
「……病気?」
「そう。怖いんだよ」
「怖い? なにが?」
「なんだろ? 人かな」
「人?」
「うん。病気なんだよ。
 外に出られない」
「仕事は?」
「してるよ。でもほとんど自分家にいる」
「でも、電車乗ってるって言ってた。あれはうそ?」
「……あんま乗らないね」
「メールで会ったっていうのは?」
「あれは――」
「アイリには会えないの?」
「………」
「会えないんだ?」
「アイリ……」
「わかんないよ、チバ」
「アイリのこと、いつからか好きになっちゃったんだ」
「ずっと好きじゃなかったの?」
「好きだよ」
「ほんとに好きになっちゃったんだ」
「アイリもチバのこと好きだよ。だめなの?」
「会うのはだめ」
「なんで? わけわかんないよ!」
「チバ、病気なんだよ」
「病気?」
「うん」
「会えないの?」
「だめなんだよ、アイリ」
「わかんない!
 わかんないよ!」
「ごめんね、アイリ」
「いいよもう!」