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:チバ、ごめんね
 ケータイあったよ
:アイリ!
 あったんだ! だいじょうぶ?
 どこにあったの?
:親がね、隠してた
 お父さんが持ってたの
:そっか。
 でも見つかって良かったね。
:親もびっくりしたみたい
 あたしがキレたの初めて見たから
 あたしもびっくりした
:うん。
 チバもびっくりした。
 でも、返してくれたんだ?
 仲直りした?
:どうかな
 びみょう
:もう泣いてない?
:だいじょうぶ
 怖くなくなったから
:友だち、どうだった?
 メール来てた?
:うん
 いっぱい来てた
:そっか。よかったね。
 もう遅いけど、明日はだいじょぶ?
:明日、たぶん学校いけない
:休むの?
 体調悪い?
:お母さんがね、キレてるの
 ケータイは禁止するって
 病気になるって
 だから明日は家から出してもらえない
:今はだいじょうぶ?
:うん
 おかあさん寝たから
:そっか。
 アイリはどうしたいの?
:ケータイ?
:そう。ケータイ。
:いるよ
 すごく大事
 でも悪いものな気もする
 お母さんの言うこともちょっとわかる
:どんなこと?
:ケータイ持ってたら悪い子になるって
 いっぱい悪いことが起きるって
 アイリ、病気なんだって
 そういう病気があるんだって
:そうなんだ。
 アイリ、怖い?
:だってケータイないと、死んじゃいそうだった
 涙がとまらないの
 怖いこと言うし、思うし
:便利すぎるのかな?
:わかんない
 アイリが悪かったのかな?
 どっかでまちがった?
:わかんない。
 アイリが間違ってるなら、チバも一緒かもしれない。
:チバはしあわせ?
 ケータイがあってしあわせ?
:アイリと会えたのがしあわせ。
 アイリと話せるのはケータイがあったからだよ。
:うん
 チバと話せるのはしあわせ