『寝相』


 さむッ!
 冷たい空気に目を覚ますと、ちゃんと着たはずの布団がなかった。
 寝る時にはいなかった姉貴が、僕のベッドの半分を占領していた。
 相変わらず、すごい寝相。
 どうやったら逆さまになれるんだ?
 掛け布団をむりやり引き寄せて、僕はもう一度丸まる。
 一瞬のち、すごい力で引っ張り返された。
 必死で抵抗する。
 足が飛んできた。
 蹴るなー。
 それでも頑張ってると、こっちに転がってきた。
 乗るなー。
 大体なんでここで寝てるんだよ?
 僕だってもう、子供じゃないよ。
 ――また喧嘩でもしたの?
 聞けない僕。
 掛け布団はあきらめて、乱れた寝姿に背を向ける。
 壁を見つめていると、豪快に寝返りを打った姉貴は、豪快にベッドから落ちた。
 ………。
 やっぱりまだ寝てる。
 部屋中をゴロゴロ移動し始めた。
 寒いのかもしれない。
 ごみ箱をひっくり返し、床に置いてあった小さな照明のコードを身体に巻き付ける。
 あっちにゴロゴロ。
 こっちにもゴロゴロ。
 放置したら本棚まで倒しそうな勢い。
 僕はため息をつくと起き上がる。
 まだ起きるには早すぎる土曜の早朝。
 姉貴をベッドに戻すため、僕はいつ終わるともしれない格闘を開始した。


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