7.


:なんだか眠れない
 チバ、お話できない?
:いいよ。かけるね。


「どしたの? 昼寝しすぎ?」
「してないよ。したかったけど」
「まあ、土曜だから起きててもいいんじゃない?」
「明日お出かけなんだよ」
「どっか行くの?」
「うん。お父さん帰ってきたから。
 朝からどっか行くみたい」
「楽しそうじゃん。早く寝なきゃ!」
「弟は楽しそうだけどさ、あたしもう子供じゃないんだよ?」
「遊園地とか好きじゃないの?」
「きらいじゃないけど。
 お父さんはあたしのこと、子供だと思い過ぎなんだよ」
「そんなもんかな?」
「そんなもんだよ」
「チバもアイリのこと、子供だと思ってるかもしれないよ?」
「チバはいいの」
「いいんだ?」
「チバはアホだからいいの」
「アホじゃないよ、社会人だからね。
 すんごい頑張ってるよ」
「そなの?」
「うん」
「社会人はえらいの?」
「えらくない?」
「わかんない」
「お父さんとか、頑張ってない?」
「しらない」
「お父さん、いつも家にいない?」
「うん、いないね」
「仕事?」
「そうじゃない?
 ぜんぜん帰ってこないもん」
「……お父さん好き?」
「わかんない」
「わかんないの?」
「わかんなくない?
 チバはお父さん好き?」
「いちおう、好きかな」
「チバ、ホモだったんだね」
「チバ、ホモだったのか。知らなかった」
「………」
「お父さんはアイリのこと、きっと好きだよ?」
「なんでチバにわかるの?」
「わかるからわかるんだよ」
「わかんないよ。
 きっと、あんま好きじゃないよ」
「なんで?」
「なんでも」
「アイリ、可愛くていい子なんだから好きでしょ?」
「わかってないだけだよ」
「わかってない?」
「メールしてる理由とか」
「理由あるの?」
「わかんない」
「友だち作るためとか?」
「そう――なのかな。
 びみょう」
「びみょうかー」
「いつもケータイ取り上げようとするんだ。
 自分も持ってるくせにね」
「お父さん?」
「うん」
「通話料、ヤバかったんじゃないの?」
「まあね」
「いくらいったの?」
「知らない。十万とか?」
「そりゃ怒られるね」
「でも今は自分で払ってるんだよ。
 だから取り上げる理由ないよね」
「自分で払ってるんだ?」
「うん」
「バイトしてたっけ?」
「してるよ」
「そなんだ! どんなバイト?」
「ないしょ」
「ウェイトレスとか?」
「ちがうかな」
「可愛いんだから、ウェイトレスとかいいんじゃない?」
「可愛いくないよ?」
「でもナンパされるでしょ?」
「うん」
「じゃあ、可愛いんじゃん」
「そんなことないよ」
「んん?」
「みんな制服見てるんだよ」
「今日土曜だよ。制服着てるの?」
「今は着てないけど」
「じゃあ、違うじゃん」
「でも想像はするでしょ?」
「う〜ん、するけど」
「じゃあ一緒だよ、きっと」
「そんなもんかなぁ?」
「そんなもんだよ
 うちの制服、かわいいんだよ。高く売れるって」