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:チバ
 チバはアイリのことどう思ってるの?
:なんでしょう、いきなり。
:ちゃんと答えて
:大事に思ってるよ。
:好きなの?
:そうだよ。
 前から言ってるでしょ?
 アイリのこと大好きだって。
:チバの言葉はよくわかんないよ


「嘘だと思ってる?」
「そんなことないけど」
「じゃあ、信じて」
「――うん」
「……僕にとってアイリは、神様みたいなものなんだ」
「かみさま?」
「そう。
 世界を自由に飛びまわる、まぶしくて自由な神様。
 僕はコンクリートの檻の中からそれを見上げてるんだ」
「そんなんじゃないよ?」
「これは例えだよ」
「あたしは、きっと大人になったんだよ。
 色んなことを知っちゃったんだ」
「いいよ。
 アイリは綺麗だと思う。
 僕なんかには届かないものがある。
 だから僕は、それを遠くから眺めるんだ。
 僕は狂ってる。
 美しいものをこの手につかみたいと思う。
 つかんで抱きしめて食べてしまいたいって思う」
「チバ、抱きしめてよ。
 アイリ食べてよ」
「だめだよアイリ。
 僕は壊しちゃうんだ。
 好きなものは壊したくなるんだよ。
 頭おかしいんだよ」
「いいよ、チバ。
 アイリ壊してよ。
 チバに壊されるならいいよ。
 一緒にどっか連れて行ってよ」